~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

新創刊「atプラス」

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このところ歴史のある雑誌の休刊、廃刊ばかり話題になっていましたが、そうした時代には珍しい雑誌の創刊の話題です。

といっても、別タイトル「季刊at(あっと)」として別会社から出ていたものを太田出版が引き受けて、新創刊されたものです。

「atプラス 01 特集資本主義の限界と経済学の限界」
   定価 本体1,400円+税
この特集の目次の予告を見たときから、発売を楽しみにしていました。
以下、特集部分のみの目次を紹介します。


特集 資本主義の限界と経済学の限界
 ● 岩井克人 資本主義の「不都合な真実
     世界金融危機がもたらした自由放任主義の「逆説」と不均衡動学の「実証」
 ● 水野和夫 ケインズの予言と利子率革命
     なぜ、利子生活者は安楽死しなかったのか?
 ● 稲葉振一郎 100年に一度や二度は起きても不思議はない普通の「危機」についての、ひどく常識的な結論
 ● 権丈善一 政策技術学としての経済学を求めて
     分配、再分配問題を扱う研究者が見てきた世界
 ● 湯浅誠 我は如何にして活動家となりし乎
     いいかげんな活動で作り出す、自己責任論に黙らない市民社会
 ● 白石嘉治 反資本主義のエナルゲイア
     不可視委員会『来るべき蜂起』をめぐる覚書

総合雑誌というものが成り立ち得ない時代に、とくていの傾向に偏ることなく、その時代の焦眉の問題のパースペクティブをとらえる場というものは、とても大事になってきています。

これまでは、こうした領域は大手出版社や主要人文系出版社が牽引してきましたが、これまでの出版社の経営スタイルでは、どこも維持できなくなってきています。

そんなときに、しばしば、あれっというような出版社が名乗りをあげて救ってくれる。
太田出版さんは、必ずしもあれっと思われるような版元ではなく、これまでも坂本龍一の分厚い音楽書などを意欲的な出版を様々な分野でし続けてきたところです。

わたしは、これからの時代の文化を考えたとき、なんとなくこれまでの出版社のカラーだけではとらえきれない、ひとりの編集者の力や、経営者のちょっとした許容幅だけでなりたい得るニッチのビジネスというのがとても大事になってきているように感じます。

もちろん、こうした雑誌の部数は、決して多いものではないと思います。営業サイドの苦労も大変な苦労をともなっているものと思います。だからこそ、大手出版社ではなく、中小の版元が採算ラインを低くして息長く続けられることがとても大事であると考えられます。

全国でも決して何万部という市場にならないこうした商品が、ひとつひとつの書店のひとり、ふたりのお客さんと確実につながって継続されることができたらすばらしいものであると思うのですが、そういう私自身のお店ではたして何部売ることができるか、大きなことは言えません。

私たち書店が10万人に一人でも、読者をきちんと見つけられれば上出来の世界なのですけどね。

とりあえず、今回の特集だけは見逃せないので、私1部だけは買っておきます。