吉村昭『三陸海岸大津波』
復興に役立てたい本シリーズ ①
文春文庫 本体438円+税 (ただ今重版待ちです)
海岸線がギザギザに入り組んだ地形は、河口付近の僅かな平野部に集落が密集し、またその河口に向かったV字に先細っていく地形が、津波の威力が進むにしたがって倍加していき、その破壊力は凄まじいものにしました。
私たちは津波というと、大きな高い波がザブンと襲ってくるような形を想像しがちですが、、実際の津波は、上昇した海面がそのまま長時間にわたって押し寄せてくるものであり、決してひとつふたつのザブンという高波をかぶってすむようなものではありません。
地元の人々はその教訓を活かし伝えるべく様々な努力をしてきました。
教訓は役にたたなかったのでしょうか。
死者数
流出家屋
この数字をみる限り、要因はひとつではありませんが、それまでの教訓を生かした防災設備や意識の向上が被害の減少要因になっていることはうかがえます。
この度の想像を超えた被害の大きさには誰もが絶望を感じてしまいますが、訓練を重ねたおかげで助かった人々、「これより下に家を建ててはならぬ」との先人の教えを守って生き延びることができた村など、それまでの努力があったからこそ救われた命も決して少なくなかったことを忘れてはなりません。
歴史から私たちはなにを学んだのか。
時とともに薄れる防災意識とどのように闘ってきたのか。
漁師たちが目撃した様々な津波の前兆の証言も見落とせません。
本書は、もっとも簡潔にその概要を知ることができる貴重な1冊です。