~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

『シェア 〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略』

復興に役立てたい本シリーズ ③

マーク・ザッカーバーグとダスティン・モスコヴィッツとともにfacebookた創業したひとり、クリス・ヒューズのことは、わたしは映画「ソーシャル・ネットワーク」のなかではじめて知りました。 

 ザッカーバーグがプログラム開発に専念してパソコンに向かっている間に、資金繰りなどで奔走し、お互いに出来ないことを補い合う不可欠の存在でありながら、互いの仕事の内容を理解できず、溝が深まっていってしまう。 

 映画のなかでは対立の構図ばかりが強調されていた感じがしたが、実際のヒューズは、他の二人と違ってソフトウエア自体には興味がなかった。 

「どうしたら人々がお互いに結びついて物事をシェアしあい、オンラインのコミュニティがユーザーの生活を豊かにできるかを考えることに熱中していた。」 

これこそが、ソーシャル・ネットワークのテクノロジーを成功に導く核心部分です。 

ヒューズは、facebookが1000万人を超えるユーザーを獲得した2007年2月、まさにこれからという時期にfacebookを退社する。 




彼の次のミッションは、新たな企業の立ち上げではなく、当時一兵卒のイリノイ州選出上院議員だったバラク・オバマのために、オンラインによる選挙活動を立ち上げることだった。市民の集団的パワーへのオバマの信念にヒューズは動かされた。 
彼はこう言う。 
オバマのためでなければ、そしてあのタイミングでなければfacebookを辞めることはなかったね」 

オバマの選挙活動にとってヒューズほどの適任者はいなかった。インターネットを使ってサポーターを組織し、動かすことにかけて、彼の右に出る者はいない。 

ヒューズは、数ヶ月もたたないうちに、マイ・バラクオバマ・ドットコム(その後マイボ[MyBo]と呼ばれるようになる)と「チェンジのために投票を」[Vote for Change]という二つのサイトを立ち上げた。 
そしてさまざまなツーツを開発する。 

そのひとつが、マイボ活動追跡ツールだ。 
これは、人々が自分の選挙活動を管理するためのツールだが、重要なのは、このシステムが選挙運動をインタラクティヴなゲームに変えたことだ。しかも、ばかデカい賞品のかかった真剣勝負―――つまり大統領選挙である。 

ユーザーはイベントを催すごとに15ポイント、個人の資金集めのサイトに寄付が集まるたびに15ポイント、イベントに参加すると3ポイント、ブログにアップするごとに3ポイントが獲得できる。 

またオンラインの活動よりもオフラインの活動にポイントが多く配点された。 

マイボは、「コラボレーション」と「健全な競争」というツボにぴったりはまった。 
2008年11月の大統領選挙までに7万人を超える個人の資金集めサイトと20万を超える地域の草の根イベントをとおして3000万ドルが集まった。 
その上、18歳から35歳の若い世代の投票率は過去最高を記録した。
それはヒューズが25歳になる前のことだった。 

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レイチェル・ボッツマン/ルー・ロジャース著 
   『SHARE シェア 〈共有〉からビジネスを生み出す戦略』NHK出版 より抜粋 





こうしたしくみが、今、このたびの東日本大震災義援金集めに大きな力を発揮するようになりました。 
しかし、日本の場合、まだお金集めのしくみが出来たばかりで、ヒューズのように、 

「どうしたら人々がお互いに結びついて物事をシェアしあい、オンラインのコミュニティがユーザーの生活を豊かにできるか」といった、しくみづくりには十分至っているとはいえない。 

でも、今、世界中でこうしたインフラが整いつつあることが嬉しくてなりません。 


世の中全体が、「所有権」の時代から「利用権」の時代へ移行しはじめています。 

アトムの経済からビットの経済に移行しはじめている。 

莫大な資本がなくても、これまでの時代に比べたら、劇的に、お金をかけずとも大抵のことは実現可能になりました。 

もちろん政府の問題はあるが、他人に文句を言っている暇があれば、たいていのことは自分で解決できる時代になりました。 

すでに手がかりは、ヒューズらが、多くのものをつくってくれています。 

さあ、これから始動だ!
 
 
 
 
シェアの具体的な事例については、以下の本がおすすめです。
 
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三浦 展 著
『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』
NHK出版 定価 本体1,500円+税