~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

「生態と民俗」

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1冊だけ入荷した本で、自分で買おうとマークしていたものをサッとお客さんが先に買ってくれた。
嬉しいやら、悔しいやら。

野本寛一 著
「生態と民俗・人と動植物の相渉譜」
  (旧題「共生のフォークロア・民俗の環境思想」青土社
講談社学術文庫 定価 本体1,250円+税

前のタイトルから想像するもの、今回の改題から想像されるもの
どちらもとても期待感がわく。

たまたま捲っていた講談社の広報月刊誌「本」に
「小動物の民俗誌」と題して著者自身の解説文が出ていました。


**** 以下、引用です ****


燕が来ると縁起が良いと言われる。
燕が巣立つと虫気が少なくなる- 
(などのことはよく知られてますが)

「燕が来たら半纏をぬぐ」という口詔を伊豆でも聞いたし、信州の伊那谷でも耳にした。
また、「燕が来たら芹を食べてはいけない」という禁忌伝承があり、これは遠州山間部、吉野山地などに伝えられている。燕は候鳥、その飛来が季節を告げてくれる。

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さて、燕は一番子、二番子、三番子を育てる。もとより標高の高いところや寒冷地では三番子は無理だ。
二番子は夏にかかるので青大将の犠牲になることが多い。
青大将は日本最大の蛇で、青大蛇(あおだいじゃ)の転化ではないかとも言われている。

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 ところで、青大将を家のヌシ・屋敷のヌシだとする伝承も全国的に見られる。なぜ青大将は家屋敷のヌシだとされるのだろうか。
各地の伝承を総合してみると、それは、青大将が米・米蔵につく鼠を捕食すること、養蚕の害をなす鼠を捕食することと深くかかわっていることがわかる。
人びとは、燕と青大将、鼠と青大将の関係に自家撞着的なものを感じてきたのだった。
したがって、鼠を狙う青大将は、殺さずに追うという形をとった。

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 家屋敷のヌシといえばヒキガエルを家屋敷のヌシだとして大切にする風もある。
ヒキガエルのヒキは、蛙の屈んだ姿勢が「低(ひき)」から来ている。東北地方の方言、ビッキはヒキの転訛である。
ヒキガエルの古語は「たにぐぐ」で、グク・ククは鳴き声だとも、潜るの意だとも説かれる。

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 ツブ・ツボなどとも呼ばれるタニシ(田螺)は淡水産巻き貝で、その語源はタヌシ(田主)である。タニシは田の主で、これがたくさんいる田は稲のできが良いと伝える例もある。こうした認識を基層としてタニシ長者という昔話が発生してくるのである。




こうした話は、本来、家のお爺ちゃんお婆ちゃんからたくさん教わるべきことなのだろうけど、
興味が尽きないですね。