~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

神々の遊ぶ場所

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前回紹介した田中優子の『カムイ伝講義』、つくづく良い本だと思うのですが、ようやく入荷したものも、昨日、売り切れてしまいました。
良書であってもベストセラーに化けるような本ではないので、小部数でも確実に入ってくれれば良いのですが、小学館とかの新刊はなかなか入手出来ないのが困ったものです。

同じような本で、
高橋睦郎『遊ぶ日本 神あそぶゆえ人あそぶ』集英社
 定価 本体3,200円+税

これも、盛んに書評などで取り上げられていて注目している本なのですが、とても入手難な本です。
先日、都内に行ったので大型店の店頭をみてみましたが、大手書店でも1冊しかおかれていないような本でした。

そんな愚痴を漏らしていると、ひと際、神々の宿る場所、遊びの空間といったテーマの本書が読みたくなってきます。

昔、新潮社の『パリ左岸のピアノ工房』という翻訳本のことを紹介したことがありましたが、
ネジなどの締め方で大事なのは、雄ネジと雌ネジとの寸法の遊びの部分、
それと締めたときに、きっちり締めきらずちょっとした遊びを残すことが大事であるといったような話が出ていました。

この遊びの部分こそ、神の宿る領域であると。


物流の精度をあげる努力は、もっともっと必要ですが、効率の名のもとに遊びの領域がなくなってしまっては悲しい。

この本は、そうした面を強調するものではなく、短歌や俳句、歌舞伎やお能などの芸能を通じた遊びの考察なのですが、こうした本が、日本中で数千人規模でも良いから、きちんとその世界で遊べる読者のところに届くしくみというのが、なかなかできない業界なのが悲しいです。