~ここから新しい世界に出会える~正林堂

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三重塔の魅力

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最近、上毛新聞社から本多忠衛著『三重塔を訪ねて 第二巻 長野・山梨・岐阜・滋賀編』(定価 本体3,200円+税)が出ました。

前の第1巻、(関東(北部・中部)編) とは違い、身近な場所ではないので横目で見過ごしていたのですが、たまたま雑誌で見返りの塔として知られる大法寺の三重塔の美しい写真をみて、わたしも長野の三重塔などにも急に興味がわいてきました。

ちょうど真田氏関連で上田城や砥石山(砥石城)を見に行きたいと思っていた折でもあり、花見を兼ねて急きょ長野へ行ってきました。

本命は大法寺の三重塔だったのですが、あわてて飛び出して地図を忘れてしまい、現地の地図を見ていたらお寺の名前がいっぱい出ており、はてこの寺だったかどの寺だったかもわからない始末。

結局、観光案内に出ていた信濃デッサン館近くの前山寺を目指すことにしました。
午前中、ちょいと妙義山に登って行ったので、到着したのはデッサン館ももう閉館間際の4時ころ。

ところが、景色は西陽を受けて陰影が浮き出る最高の時間帯。

桜の咲く境内の落ち着いた佇まいがなんとも美しく映えていました。

早速撮った写真はiPhoneの待ち受け画面にしました。

この三重塔は「未完成の完成塔」として本多忠衛さんの本のなかでは、次のように紹介されています。

相輪は比較的長く、初層の桁行に対して高さが高く、しかも初層と三層の桁行の長さの比率は少なく、スタイルの良い塔である。(略)
屋根は杮葺(こけらぶき)、垂木は各層二軒の平行繁垂木、軒の組物は三手先である。一方、二、三層の壁面には窓等の造作はなく、ただの横板張りで単純にまとめられている。このため塔全体として見ると飾り気がなく整然としていて、見る人の心を惹きつける。

また、木鼻(象鼻)の象の彫物も愛きょうを加えている。初層の中央柱間は、桟唐戸、脇間は板壁としている。ただよく見ると間斗束に斗(ます)のみで束がないこと、二、三層の柱には長押を組み込む切口が彫ってあるが長押はなく、また、胴貫が長く突出したままで、縁や高蘭はできていない(初層にはある)。

これが《未完成の完成塔》と呼ばれている由縁であるが、この辺りにわれわれが疑問を抱くと同時に親しさと魅力を感じるのは設計者の意図であったのだろうか。


わたしとしては、まったく予想外のことではありましたが、本書のおかげで三重塔の魅力にぐいぐいと惹きこまれてしまいました。