~ここから新しい世界に出会える~正林堂

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もう一つの八甲田雪中行軍

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マークし損ねていた大事な本。

間山元喜 著
「孫が挑んだもう一つの八甲田雪中行軍』
  中経出版 定価1,575円

以前、「かみつけの国 本のテーマ館」のなかの第5テーマ館
「今、戦争をどう語るか」の組織と個人をめぐる関連書紹介の中でも紹介したことですが、
新田次郎の『八甲田山死の彷徨』で有名な雪中行軍とは別に、同じ時に無事生還していたチームがありました。

http://kamituke.web.fc2.com/page065.html

高木 勉 著 『八甲田山から還ってきた男  雪中行軍隊長・福島大尉の生涯』
   
   文芸春秋(1986/05)    定価1,300円+税品切れ 文春文庫(1990/02) 品切れ


 今も各国の戦史教室で学ばれている八甲田山の雪中行軍。
199名の遭難死事故と同時期に福島大尉率いる37名の隊は、同じ気象条件のもと一層困難なコースを踏破し全員生還を果たしている。(新田次郎の小説では徳島大尉の名)
成功した福島隊の業績はなぜ秘匿されてしまったのか。群馬出身の福島泰蔵は地理学のエキスパートとして軍の期待を背負い、迫り来るロシア戦に備え寒冷雪中行軍の軍隊活動の調査を委任される。
 同じ強風寒気のなかで苦闘する指揮官でありながら、片や「天は我を見放したか」と嘆き隊の指揮を諦め個人行動に任せる最終判断をせざるをえなかった山口大尉と、「吾人若シ天ニ効スル気力ナクンバ、天ハ必ズ吾人ヲ亡サン。諸子夫レ天ニ勝テヨ。」と訓示し、隊員に奮起を促した福島大尉、それは精神の差ばかりではなく、組織と責任、知識、技術、知恵、何れにおいても歴然とした差が存在していた。
 企画力・計画性・リーダーシップ・危機管理能力を学ぶ格好のノンフィクション。

  以上「かみつけの国 本のテーマ館」内の紹介文より

この福島泰蔵のお孫さんにあたる著者が、青森テレビのドキュメント番組「熟年男の大ロマン・八甲田雪中行軍始末記」としてその行軍を再現する。
残念ながら番組を見ていませんが、おそらく再現するからには、当時の服装、装備もそれなりのものにしていたことと思います。

失敗と成功という貴重な経験を持っていながら、それを活かせなかった当時の軍部、
それはそのまま太平洋戦争の軍部の体質につながり、さらには今日にまで学びきれていない教訓としてつながっている。

テーマ館で紹介した群馬出身の福島大尉の本が入手できなくなっていただけに、本書の企画はうれしい。