~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

群馬県民、1年の本購入額 3万5030円

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昨日の上毛新聞の記事です。
(群馬経済研究所の調査による)


3年前に比べて群馬県民の本購入額は、7.5%減少しているとのことです。
この調査によると、年齢が高いほど購入金額も大きい傾向にあります。


ところが、こうした数字をみたとき、おそらく多くの人が誤解している面があるのではないかといつも思います。

「本購入額」というと、つい立派な文芸書や単行本を読んでいる人たちのイメージを持ちがちですが、
現実に本と呼ばれるものの市場を支えているものの圧倒的な部分は、
文芸書のような読みものではなく、雑誌・コミックなどが市場の約半分を占めています。
残りの半分を日常生活で必要な実用書や学習参考書、そして文芸書、文庫、新書、児童書などで分け合っているのが実情です。


押し寄せるデジタル化の波に対して、紙の本の価値を守ろうと言っている人たちのイメージしている本は、
えてして文芸書、児童書などの読者層が中心の本です。
残念ながら、それらが支えている領域は、全体の2割程度にしかすぎないものです。

さらに娯楽ものを除いた「教養」としての本ともなると、おそらくその2割のうちの1割以下の市場規模ではないかと思われます。


ここに、読書の輪を広げようといった運動と、現実の出版市場を守り、本屋の存続を願うものとの間に大きなズレがあります。

紙の本を中心とした出版「文化」を支えているのは、日常生活で必要に迫られた冠婚葬祭の知識などをはじめとする一時的な情報や娯楽の話題が圧倒的部分を占めています。
これら大半の情報は、ネットにとって代わられても多くの人は、不自由を感じることなく、むしろ恩恵をうけることのほうが多いのではないかと思われます。

紙の本の市場は、縮小し続ける必然にありますが、かといって完全に無くなることもありません。
しかし、その大半の実務書、娯楽書、手軽な日常情報などは、デジタル化されたネット情報の方がこれからははるかに便利であるといえます。


そうした環境のもとで、先の本の購入金額をみると、
これから圧倒的な部分がデジタルにとって代わられる時代に、先の金額の楽観的にみても半分以下規模の読者人口で、出版市場をどのように支えていくのか。
もっと抜本的視野でとらえなおさないといけないのではないかと、その問題の深刻さを痛感させられます。

「モノ売り」的発想ではなく、どのように情報サービスというものを構築していくべきなのかということです。


ここにきて、私のいる書店が膨大な在庫をかかえない中小書店であったことがほんとに良かったと思うところですが、これから求められる本を軸としたお客さん(読者)とのコミュニケーションのはかれる店作りには、まだまだたくさんのハードルがあります。


でも、やっと情報文化というものが本格的に面白くなってきたような期待感もあります。


出版業界や同業者のひとたちは、残念ながらこの変化を悲観的にみるひとばかりですが、
個人ブログで紹介「モチベーション3.0」の発想からも、冷静に考えれば考えるほど、
なんか予想以上に面白い時代がやってきそうな予感もします。


蓄える知識は急速に魅力が無くなり、
創造的に考えること、面白いことに人びとが自由に飛びついて支離滅裂かのような会話が飛び交う社会が目に浮かびます。

そこでは、どんなビジネスが考えられるのでしょうか。


なんかワクワクしてきます。