朝もやのなかの覚満淵
朝4時に、赤城山の覚満淵へ行ってきました。
朝5時ころ。
朝日が差し込みだすと次第にあたりの景色に色がつきだす。
朝5時を過ぎたころ、山の上の方から男性の叫び声とも、言い争う声ともとれる大きな声がしました。
いったい何の騒ぎかと気にはしつつも、すぐに声はやんだので深く考えることもなく撮影を続けていました。
ところが、だいぶ周囲が明るくなったので、帰ろうと駐車場に向かいだしたときです。
けたたましくサイレンの音が近づき、
下から消防車、救急車が次々とのぼってきました。
いったい何の騒ぎかと思っていたら、すごいスピードでパトカーがまっすぐに私たちの方に向かってきました。
とっさに逃げようかと思いましたが、そこは冷静に。。。
車から急いで下りてきた警官が
「通報された方ですか?」
と聞いてきた。
いったいなんのことかと思ったら、
熊が出てけが人が出たらしいとのことでした。
そういえば・・・
さっき山の上から男性の大きな声が・・・
事態がよくわからないまま、お巡りさんの説明を聞いていると、
じきに若い夫婦の車がやってきて、彼らが通報した人であると知りました。
その二人は、山に登ろうとしたときに、熊注意の看板を見てやや心細くなり、
同じころに登りはじめた男性と一定の距離を保ちながら一緒に登ることにしたとのことでした。
すると登りだして間もなく、その男性は人の背丈ほどもある熊に突然出くわしてしまったというのです。
慌てて逃げて下山しようと思ってすぐに、後から男性の大きな叫び声を聞いたので、
これはただ事ではないと、下山してから警察に通報したとのことでした。
やはり、あの声は普通の声ではないとは思いましたが、そういうことだったのか。
そういえば4時ころ私たちが出発をするとき、元気よく声をかけてくれた男性がいました。
「これから登られるのですか?」
「いえ、そこの覚満淵へ撮影に来たんです。
どちらへ登られるんですか?」
「その駒ヶ岳へ。」
短いやり取りでしたが、とても声の明るい方でした。
今、見ればその方の車は広島ナンバー。
声の主は、どうやらその方だったらしい。
警察は猟友会の人たちがそろってから山に登りだすとのことで、
しばらくの間、私も手持ちの地図を車から出したりしながら状況把握のための質問を受けていました。
その後の結果がわかるまで一緒にいることは出来ないので、通報した夫婦も私たちも間もなくその場を去りましたが、
ずっと気になって仕方がありませんでした。
遠くから一人で来たのに、もしものことがあったら誰を頼るのだろうか?
挨拶を交わした私たちこそ、万が一病院へでも担ぎ込まれたときなどは、手助けをすべき立場にあったのではなかったか。
山では、ちょっとした出来事に注意を払うこと、
できることは後で後悔する前にきちんと手を打っておくべきことなど
いろいろ反省させられました。
その後、注意して新聞を見ていましたが、大きな事件にはならなかったらしく
それらしい報道はなかったので、きっとその方は無事であったのだと思います。
思えば深夜、私たちが赤城へ行くときは、たくさんのシカと道路で会いました。
シカも、クマも、サルも、
その他の多くの生きものたちと同様、日ごろ私たちが目にすることが少ないだけで、
いつも近くに住んで暮らしている隣人たちです。
その目にすることの少ない「隣人」の存在を、強く意識させえられた朝でした。