~ここから新しい世界に出会える~正林堂

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いなむらの火

先月のことですが常連のお坊さんが、資料をたくさんかかえて震災・津波関係の本をたくさん注文してくれました。
戦前の教科書に載っていた「稲むらの火」に関連した資料を集められる限り集めたいとのことでした。
 
年配の方に話を聞くと、けっこうこの話は学校で教わった記憶がある人が多いようですが、
国語の教科書で知ったのか、どこかの紙芝居を見て知ったのかは
いまひとつはっきりしません。
でも、かなり高い認知度であることは確かのようです。
 
震災直後は、昔はいくつか出ていたものの品切れのままで手に入るものは少なかったようですが、
最近になってようやく、かなりのものが重版されて入手できるようになりました。
 
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原作 小泉八雲 文・絵 高村忠範
『命を救った稲むらの火
 
そのお坊さんは、かつて明恵上人の遺跡を訪ねて和歌山に行きながら、そのすぐ近くに稲むらの火の館があることを知らなかったと、とても悔やんでいました。
 
教科書や紙芝居でこうした話が深く記憶に残り伝え続けられることは、とてもすばらしいことで、この機会にこうした教育が見直されていくことを強く期待しています。
 
 
        (以下、あらすじ)
 
老いた浜口五兵衛(本名浜口儀兵衛)が、夕闇に包まれようとする頃、村里はなれた小高い丘の上にいると
グラグラーっと家をゆるがす地震に出会った。
 
特に激しいというほどの地震ではなかったが、唸るような地鳴りが年老いた五兵衛には、
これまで経験したことのないような不気味な感じを思わせた。
 
五兵衛が丘の下の部落から海岸へ目を移すと
アッと息も止まるほど驚いた。
 
それは風とは反対に、沖へ沖へと波が動いて見る見る海岸には、
広い砂原や、黒い岩底が地獄の底のように現れていたのである。
 
これは津波がくる前兆だ。
 
すぐにそれを悟った五兵衛は、村人になんとかそれを伝えたかったが、声は届かないし、
駆け下りて伝える時間もない。
 
「そうだ!」
 
五兵衛は目の前の黄色く実った稲たばに目をつけた。
 
これを燃やせば村の四百の命が救える。
 
そう思い五兵衛は松明に火をつけてそれを燃やし、
 
火事だぞー、火事だぞー、火事だぞー
 
と村人に知らせ、丘の上に呼び寄せた・・・・
 
 
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『紙芝居 いなむらの火』
川崎大治・脚本 降矢洋子・絵
童心社 定価 2,310円
 
群馬の地元では、天明浅間山大噴火の被害のことが、地元の鎌原村で声明で受け継がれていますが、わかりやくす伝えやすいストーリーに磨かれて、末永く伝わることはとてもすばらしいことです。
 
ただ防災教育というだけでなく、このような文化が根付いていくといいですね。