~ここから新しい世界に出会える~正林堂

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激減したクマの被害

毎年この季節、リンゴ園を中心に
里に下りてきたクマの被害のニュースが絶えないものですが、
今年は少ない。

いや、少ないばかりでなく、
激減したというニュース(本日の東京新聞)を見て驚きました。


昨年の利根沼田地区の農作物被害額は
過去最大規模の約4千万円
被害面積も37ヘクタールを記録した。

それが今年の被害額は
約360万円
昨年の10分の1以下に激減したということだ。
被害面積も25ヘクタールに減少した。

檻につかまったクマの頭数も
33頭で、昨年の230頭にくらべると約7分の1。


はじめは様々なクマ対策が進歩して、その効果がようやく出始めたのかと思ったのですが、
実態はそういうことではなかった。

クマ、シカ、サルなどが出没して農家や一般の民家に被害を与えるとき、
よくその原因として指摘されることに
自然界の山と人間界の境界線の役割を果たしていた里山の荒廃などがあげられます。

そして一度里に下りてしまった動物が、そこにおいしいエサのあることを知ってしまったら、
どんな対策をうってもなかなか追い返せない、
といったようなことをよく聞いていました。

ところが、今年のクマの害が激減した例は、
こうした今までの考え方を覆すほど
本来の自然の豊かさを私たちに再認識させてくれるものでした。

それは、今年は山のドングリが良く実っていて
山にエサが豊富にあるためにクマが里に下りてこなかったらしいということです。

山のドングリがどれだけあるかが、クマの行動に与える影響は
常識的に昔から言われていましたが、
一度、里の甘いリンゴなどの味をしめてしまったクマが、
山のドングリが豊富な年でも里に下りてこないものかどうかは、
はっきりとした説明はこれまではできなかった。

それが、今年の事例を見ることで、
どんなに美味しいものを一度知ってしまったクマであっても
危険の多い人間界にまで出てくることは、
やはりそれなりの特別な事情によるのではないかということが、
あらためて浮き彫りにされたということです。

山に豊富なエサさえあれば、
どんなに品種改良を重ねた美味しく甘いエサが里にあったとしても、
人間と接触する危険をおかしてまで、
人里におりてくる理由はない、ということです。

とはいっても数字上は、確かに昨年の被害が異常に跳ね上がった年といえるので、
今年が突出して少ない年といえるほどのものではない。

それでも、この激減という変化は、
山が本来の豊かな実りを与えてくれる空間でさえあれば、
いかに大きな変化をもたらすものであるかを私たちに教えてくれるものだと思う。



「かみつけの国 本のテーマ館」関連ページ
「山でクマに会う方法」
http://kamituke.hp.infoseek.co.jp/page080.html

マタギに学ぶ自然生活」
http://kamituke.hp.infoseek.co.jp/page136.html