~ここから新しい世界に出会える~正林堂

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青き上に 榛名・伊香保文学紀行

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伊香保のお客さんから、土屋文明記念文学館で見た伊香保関係の本を取り寄せられないかとの問い合わせがあり、早速、文学館さんに問い合わせたところ、そちらでの刊行物が様々なところで印刷しており、ものによって販売チャンネルが異なるとのことで、その問い合わせた本の印刷元を紹介していただきました。

その後担当の方から折り返し連絡が入った翌日、なんと通常のルートでその本が入荷しました。

地元関連の本の場合、大事な本でも流通システムが大手の取次経由と異なり、手作業の配本である場合が多いので、インターネットで検索してもなかなか情報がつかめない場合が多いのです。

現品を見てみたら、以前入荷した赤城山にかかわる文学作品をまとめたもの『ああ、これ山 赤城山文学紀行』の続編でした。
こうしたものこそ、地元でたくさん売りたいのですが、前回同様、土屋文明の書をタイトルに使っているこだわりなどから、いまひとつ店頭では目立たない装丁になってしまっています。

このことは、前作でお客さんからも指摘されたことなので、しっかり書いておきます。

こうした大事な本が総じて「売ること」、読者に「注目される」ことよりも、主旨をまとめることのみに注意がそそがれがちになってしまうことが、いつも本屋としては残念に思ってしまうのですが、編集作業に出版分野の経験豊富なデザイナーがいれば、もう少し違った装丁になっていたのではないでしょうか。

とても大事な本であることは間違いないのですが、こうした本は、短期間で集中的に売れるものではなく、長い時間をかけて売れ続けるものなので、装丁が目立たず最初の売れ行きが鈍いと、そのまま店頭から消えたままになってしまうのです。

郷土関連の出版社は、ただですら市場縮小の傾向にある出版業界のなかで一際苦戦を強いられていることと思いますが、書店の立場からすると、内容を客観的にまとめたり、包括的、体系的にまとめることよりも、そのなかで最も印象的な部分や、特徴を現す部分に焦点を絞って、それを強調した出デザイン、装丁を考えたものを願わずにはいられません。

これは自分でも常に反省させられているのですが、自己満足にとどまらず、「伝える」ということにもっと労力を割いた仕事を心がけていきたいと思います。

伊香保関連の本といえば、群馬ではうちが一番売らなければならない立地にあるので、細かいことにはこだわらずに、なんとかがんばります。

昔、『伊香保みやげ』という類似の本がありましたが、一般書店に流通するものではなかったので、本書は是非、末永く売りたいものです。


群馬県土屋文明記念文学館 編
『青き上に  榛名・伊香保文学紀行』
 定価 本体2,095円+税