~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

福岡正信さんが亡くなられました。

イメージ 1

究極の無為自然老子の思想を説いて、それを実践普及させた福岡正信さんが、16日に亡くなられました。
1913年生まれ。
横浜税関植物検査課勤務などを経たのち、1947年、帰農。
以後、自然農法一筋に生きる。
1988年、インドのタゴール国際大学学長のラジブ・ガンジー元首相から最高名誉学位を授与。
同年、アジアのノーベル賞と称されるフィリピンのマグサイサイ賞「市民による公共奉仕」部門章受賞。
主著『自然農法 わら一本の革命』は世界中で翻訳出版された。
他に、『無機/世粒很拭戞慳記供〔気療学』『無掘ー然農法』『自然に還る』など。


福岡さんの自然農法から得た哲学は、これまで理論的に表現することが難しいといわれた老子の思想(タオ)を、はじめて実践的に体系づけたともいえるものです。
いわゆる有機農業やそれに類似した自然農法ではありません。
究極の「無為自然」を実践し、なおかつ、それによって豊かに育った自然が、化学肥料や近代農業で実践している畑よりもはるかに高い収穫率を上げることを立証しました。

この無為自然というのは、なにもしないのだけど、ただのほったらかしとは違うところが難しい。

最近、ブレイクした加島祥造老子に関する著作もすばらしいものですが、福岡正信老子理解は、近代哲学の歴史も消化したうえで、とてもわかりやすい理論つけが出来ています。なおかつ、自ら生涯を通じてその実践と世界への普及に努めたのです。ときに宗教的な誤解も受けそうな方でしたが、著作を読めばその深さには、誰もが心打たれます。

私の「かみつけの国 本のテーマ館」のなかでも、いつかこの福岡正信さんのことは、系統的に紹介することを予告していましたが、それが実現する前に亡くなられてしまいました。

人間の意志の力によって切り開く「近代」社会の対極であるようでいながら、自然と一体化してこそ人間の意志も完成できるという次代の世界観も現しているものです。

これも、要約した表現では簡単には伝わらない世界ですが、その実践の姿(山や畑)を見ると誰もが目からウロコが落ちるような体験をすることが出来ます。
昔から、たくさんの人が福岡さんのところへ弟子入りして育っていますが、現代社会でほんとうの「無為自然」にたどりつくことは、ほんとうに難しいものです。

それは「自然保護」「環境保護」などの表現とは別次元の、自然の生命力そのもののすばらしさというものを教えてくれるものであり、私に保護の対象としての自然ではなく、生命の再生産を軸とした自然と人間社会のあり方というものを気づかせてくれた人でもあります。

誰でも簡単に理解できる世界ではないかもしれませんが、これからの次代の対極で、これまで以上に亡くなったのちも輝き続ける存在であると思います。

ご冥福を心からお祈りいたします。