~ここから新しい世界に出会える~正林堂

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待望の本、田村貞男著『箕輪城 残月記』

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名将としての呼び声が高いにもかかわらず、いまひとつ地元以外での知名度が低い箕輪城主、長野業政に関する本の刊行が相次いで嬉しい限りです。

残念ながら、地元でも箕郷町周辺以外では、群馬県人ですらあまり知られていないようです。
この長野業政と上泉伊勢守信綱は、実力相応の人気が出るよう、「かみつけの国 本のテーマ館」でもなんとか宣伝し続けたいと思っているだけに、こうした本が刊行されることはほんとうに有難いものです。


刊行された本のひとつは、かつてシナリオライターとして活躍されている野口泰彦さんが『是正滅法』というタイトルで上毛新聞社から出されたものを改題して学陽書房の人物文庫のシリーズに収められたもの。

野口泰彦『長野業政』
学陽書房 人物文庫 2009/01
定価 本体880円+税

もう1冊は、田村貞男さんによる『箕輪城 残月記』
上毛新聞社 2009/02
定価 本体1,600円+税

野口さんの『是正滅法』を読んだときは、その文章のしっかりとした構成力に関心させられたものですが、今度の田村さんによる『箕輪城残月記』は、小説としてよりも歴史資料の記述整理能力にとても関心させられるものでした。

武田、上杉、北条の三大勢力がしのぎを削る争いを続けていた経緯が、じつにわかりやすく整理されたかたちで語られているので、長野業政の歴史上の位置づけが鮮明に浮かび上がるように感じられました。

また、鉄壁の結束を誇る長野業政率いる箕輪方が、わずかな隙から小幡図書之介景定と小幡上総之介信真の対立をうみ、そして上総之介信真の武田方への寝返りにいたる様子が、実にリアルに描かれているのです。

局面により立場を変える真田一族の描写でも共通しているものですが、戦国の世ならではの厳しい環境を、とても説得力をもって語りかけてくれているすばらしい1冊です。

本書は、戦国時代のみならず一国の城主として、今の大河ドラマ天地人』ではありませんが、義を貫き通した名将長野業政の姿を伝える大きな一助となるものと思います。

でも、どうも幅広い人びとにこの名将の姿を知ってもらうには、こうした優れた著作の力だけではなく、人物文庫『長野業政』の帯にかかれている

「仁に生き、義によって戦う!
信玄を震撼させた“上州の大鷹”」

といったようなコピーを前面に出して強くアピールしないと、多くの人には伝わりきれないような気がします。

まずは、
この2作品を一人でも多くの人に読んでもらうことですがね。