~ここから新しい世界に出会える~正林堂

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『沈まぬ太陽』と小倉寛太郎

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映画『沈まぬ太陽』を公開後間もなくみてきました。

細部の仕上げ方には疑問を感じるところもありましたが、多くの困難を乗り越えて、長い原作をこれだけの作品にまで仕上げてくれたことには、大いに敬意を表したいと思います。

この作品はまず新潮社から刊行された時点で、大変な圧力に抗してつくられた経緯があります。
そのことばかりでなく私はこの作品に関して書きたいことは山ほどあるのです。

新潮社が「沈まぬ太陽」が刊行する際、当然日本航空から広告掲載を打ち切られ、定期刊行物の広告収入が大幅な減収をきたしたが、掲載された週刊新潮の売上部数増加分で十分広告収入のマイナスはぼ埋まったことが 、モデルになった小倉寛太郎の著作『自然に生きて』のなかに書かれています。

モデルになった小倉寛太郎のこの著作は、品切れで手に入らないと思っていましたが、どうやらこの上映にあわせて重版してくれたようで、明日には3冊入荷の予定です。

つい先日、まだ映画は観ていないというお婆さんが、この小倉寛太郎の本はないかと電話で問い合わせてきました。
残念ながらその時、本書は店になかったので、ブルーバックスの『フィールドガイド・アフリカ野生動物―サファリを楽しむために』と岩波ブックレット佐高信との対談『企業と人間』を買っていってくれました。
電話では、歩いて30分かかるところなのですぐには行けないと言っていたそのお婆さん、電話番号でも聞いておけば良かったけど、残念ながら、そいうい気のきくことがパッと出来るような私ではありません。



沈まぬ太陽』編集担当の新潮社の山田さんは、単行本で1,2巻が出てベストセラーになった際、「よかったあ」と言って喜んだ途端、血を吐き、入院された。
部下の見舞いに「150万部売れたら報告に来い。それまで来るな。」と言って、現実に150万部になって部下が報告にかけつけたら、「よかったなあ」と言って数日後に亡くなってしまったとのこと。

今回の映画製作にあたっても、同様の困難があったことが十分想像されます。

この事故の起きた時、日航は経営体質を改善する最大のチャンスでした。
にもかかわらず、それを成しえなかったばかりに、この時の体質のまま日航は今日の危機に至ってしまっている。


登場人物の重要度からみると、まず主人公の恩地役の渡辺謙はいうまでもありませんが、国民航空会長、国見役の石坂浩二が、本来はとても大事な役どころなのですが、これはちょっとミスキャストでしょう。

でも考えてみると、武士や軍人の大物役の出来る役者はたくさんいますが、企業人の悪役でない大物の出来る役者というのはちょっと思いつかない。
確かに難しいところなのだろう。

制作発表の記者会見で、この映画製作の意気込みを涙まで流して訴えた渡辺謙ですが、やや肩に力が入りすぎてしまって、実際のモデルの小倉寛太郎に比べて深刻な表情ばかり出過ぎてしまった気がします。
現実の小倉寛太郎も、実際には凄絶な体験の連続であることには違いないのですが、そのプロフィール写真やご自身の文章などからは、もう少しユーモアに溢れた大きい人間であると感じます。
渡辺謙のような深刻な表情ばかりしてたら、とてもあの苦境は乗り越えられなかったのではないだろうか。

恩地元こと小倉寛太郎の生きざまは、30代の頃の私にとっても大きな支えになりました。

「ここで負けるわけにはいかない」

今は、たったひとりの闘いだけれども、決して自分はひとりではないのだと。

それは、今も変わらないかもしれない。


どうか一人でも多くの人に見てもらいたい映画です。
そして原作を読んでいない人は、小説『沈まぬ太陽』も是非、読んでください。

当店には、売るほどありますから(笑)。



この映画上映のおかげで、私の「かみつけの国 本のテーマ館」のアクセスも上がり、
日航機事故の関連ページからの売り上げペースも伸びています。
http://kamituke.web.fc2.com/page063.html

長い間手直しをしていないページなので、古く名なってしまった表現もあるのですが
ありがたいことに、ウィキペディアの小倉寛太郎のページに私のサイトがまだリンクされていました。
http://kamituke.web.fc2.com/page092.html