~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

ゴッホと言えば?

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古い?
 
ゴッホ展に行ってきました。

メジャーな混みそうな展覧会へは、あまり行きたくなかったのだけど、ゴッホは特別。
 
学生時代、美術評論家瀬木慎一の授業で『ゴッホの手紙』の講義を受けました。
ゴッホが色彩の研究、絵の具の研究をいかに緻密に積み重ねていたかといったようなことを聞いたのだけれども、原色を使ってダイナミックに絵の具を分厚く塗る印象とは正反対の、緻密で神経質な点描画家としての実像が、その膨大な手紙から浮かび出てくる。
 
このたび、その手紙の原文すべてが精緻な注釈と英訳文つきでネット公開されました。
Vincent van Gogh The Letters 
http://www.vangoghletters.org/vg/
 
ただ原文がすべて公開されただけでなく、かつてのオランダ語のみの公開では価値半減していたものがネットで世界中に読まれるようになったので、デジタル時代の恩恵の顕著な例として注目されています。
しかも、手紙の中に出てくる人名や地名などは、すべて裏をとって注釈をつける作業をしたというもの。
私は英文を読むほどの気はありませんが、こうした資料がネットで全世界に公開されること、
その意義は、計り知れないものがあると思います。
 
これまで作家や学者の何々全集の類いに精緻な索引をつける作業は欠かせないものでしたが、その索引というものがデジタル化によって、何か調べごとをする人にとっては飛躍的な機能をともなって恩恵をもたらす時代になりました。
クラシックの作曲家の楽譜全集などもネットで公開されるようになりだしていますが、これまでの高価で一部の人しか見ることができなかった貴重な資料が、人類の共通財産として世界中に無料で普及される世の中になりました。
こうしたことは出版界の首を絞める面もありますが、私はすばらしいことだと思います。

そうしたデジタル公開資料の最高峰のものとして、今この「ゴッホの手紙」はあります。
手紙に添えられた絵をパラパラと見られるだけでも面白い。
 
そんなこともあって、小林秀雄の評論とあわせてゴッホを振り返るためにも、今回の展覧会は、どうしても行っておかなければなりませんでした。
ゴッホだけではなく、強く影響を受けたミレーの作品からクールベ、スーラやシスレーシニャックやなど、関連のある同時代の作品が見られたのも良かった。
この時代ほど、あらゆるジャンルの芸術家たちが、それぞれの方法で同じ方向を見ていたときはなかったのではないだろうか。
そんな時代はもうあり得ないのでしょうね。
 
また新国立美術館というところもまだ行ったことがなかったので、この機会に是非と思った。
いや~立派な建物でした。
あれで設計デザイン料いくらとったんだろう?