~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

草の者になる

無理!

草の者のトレーニングのつもりで、
午前0時30分、月夜野から中之条を目指して
直線で夜がけ歩きをしようとしたが、
昼間の訓練もしないで、いきなり道なき道を
暗闇のなか突っ走るなんて、とてもできるものではなかった。

ちょうど半月で月明かりは冴え、
気温もマイナス6℃。
山の夜として寒いというほどではない。
今満天の星空になっているが、
昼間、山を見上げたとき吹雪いていたとおり、
薄っすらと雪が積もっている。
車から下りて歩いてはじめてその滑る路面を知り、
あらためて冬季路面の運転の怖さを感じる。

今日は準備段階で、営林用地下足袋にあう靴下がどうしても見つからなかったため、
普通の運動靴にして、行程は短縮して
林道に沿ったかたちでコースをとり、部分的トラバースで山を突っ切ることにした。

薄く雪の積った林道をあるくだけなら問題ない。
星空も美しい。

しかし、左右の木々が道を大きく囲うような所にはいると
あたりは急に真っ暗闇になり、左右の暗闇から妖気が襲ってくるような怖さを感じる。
沢筋の山中野営時のように、
白装束で髪を振り乱した女性がかけ上がってくるような怖い雰囲気ではないが、
道にかぶさる木々の存在そのものが、夜の闇のいいようのない怖さを感じさせる。

歩くことに専念して怖さを振り切ろうと
思い切って大きな林道のカーブを直線で突っ切ろうとすると、
僅かな距離でも、垂直に崖を下り、
木々につかまり、つかまり、また崖をよじ登ることを強いられる。
それが低木の急斜面であれば、目的地目指して一気に駆け下りられるものだが、
樹齢10年以上の木々に覆われた林に一歩踏み入ると
真っ暗闇のなか、木の根に足をとられ、
枝に顔を引っかかれ、
その枝で眼がねなどうっかり落とそうものなら、
探すのに一大事。

暗闇がずっと続いていれば、少しは目も慣れるかもしれないが、
月明かりと真っ暗闇が交互に出てくる道のりでは
かなり訓練された者でなければ、先を常に見通すことなどできまい。

少し歩いただけで、運動靴の中に小枝や石がどんどん入る。
やはり、営林用地下足袋でなければ、
この闇の中で藪斜面を登り下りすることはかなり酷だ。

そんなことで結局、ほとんど林道をたどりながら、小1時間ほど歩いただけで
車のところに引き返すことにしてしまった。
わかっちゃいるけど
バカだった。

地図上に引いた一直線に添って歩くなどということは、
まず昼間に試みてみるべきこと。
しかも、草の者の真似だからといって、
草の者であれば、人目につき難いとはいえ、
当然、早く安全に歩きやすいコースを選んで走るはずで、
無闇に難所、急な崖を突っ切るようなことはしない。
わかっているはずだけど、
やはりバカだった。

ま、予備調査としてはこんなもんか。
と自分を納得させて渋川に帰った。