~ここから新しい世界に出会える~正林堂

渋川市の書店「正林堂」からお店の企画、本の紹介、地域の情報などを気ままに発信します。

赤城の梅じいちゃん

当店には、リュックを担いで定期的に本をまとめて買っていってくれる
お得意さんのおじいさんが二人いたが、
そのうちの一人、梅じいちゃんがとうとう体調を理由に
店に来れなくなってしまった。
といっても95歳。
今まで、はるばる来てくれていたのが不思議なくらい。

今日、その梅じいちゃんのところに頼まれていた本
(プレゼント用の本16冊)を届けに行ってきた。

約束の時間、ちゃんと待っていてくれたようで、
いつもは家に入って大声で呼んでもなかなか出てこないのに
今日は、車が着くや否や窓をあけて迎えてくれた。

二種類の本を各8冊、孫や知り合いに贈ってやるというのだが、どういう組み合わせでどう送りたいのか、電話の話では要領を得なかったので、直接聞いたほうが早いと思い訪ねてきたのでもある。
ところが、直接会ってもなかなかどうして欲しいのか良くわからない。痺れを切らしてこっちから勝手にこうするのか?と作業をして見せようとしたら、ちゃんと事前に用意した組み合わせと宛名の書いた封筒を出してくれた。
オイオイ!

そのうちの1冊は、
松原泰道の『九十九歳。今日をもっと工夫して生きる』

梅じいちゃんいわく。
「俺95歳だけど、若いものにいろいろ言うと嫌がられることがあるんだよ。でも、こういう人が言ってるのを読めば納得してくれることもあるんだ。まあ、どう取られるかはわかんねえけど、こうするんだよ。」
そう言って人にあげる本をせっせと買ってくれる。

梅じいちゃんがあげるのは本だけじゃない。

「俺は本読んでもちっとも身につかないんだけど、一歩でも、半歩でも行動にすぐ移そうと思ってな。読んだこと、こうして書いておくんだよ。そしてどんどん人にやるんだよ。」

そう言っていつも見せるのは、
お世辞にも上手いとはいえない筆字で仏教の言葉などを、
これまた下手な絵とともに色紙、短冊やただの色紙などに書き、
それを孫が送ってくれたというダンボールに貼り、
不器用に取り付けた紐で吊るせるようにしたものを大量に作っている。

「こんな下手なもの誰も喜んで受け取っちゃくれなかんべけど、
暇つぶしにいいんだよ。」

95歳の梅じいちゃん、
繰り返し、繰り返し言う、
「一歩でも半歩でも行動しねえとだめなんだよ。」

不覚にも涙が出てきてしまい
それを見られてしまったのか、
さらに家の奥からダンボール板に書いたものを、
次々に引っ張り出してくる。

太陽のおかげ
空気のおかげ
水のおかげ
地球のおかげ
国家のおかげ
社会のおかげ
先祖のおかげ
父母のおかげ
師のおかげ
衣食住のおかげ

「そんで、これは叙勲の祝いのときに皆に配ったもんだ。
これみんなあんたにあげる。持ってきな。」
と言って、俺達みたいな何もあげられない金の無えモンは、
この無財の七施ってのがあるんだよ、と

一、和顔施 相手の人に笑顔で接する
二、慈眼施 いつくしみの目でみつめる
三、心慮施 相手の喜びや悲しみをわかちあう
四、捨身施 身をもって人に親切にすること
五、愛語施 温かい言葉で語りかけること
六、房舎施 公共の場所を掃除する
七、床座施 乗物や其の他の所で席を譲る

のコピーもくれた。

ほんと、参った。

梅じいちゃん
月曜に郵便出したらまた来るから。